2015年1月9日 17:00
女の節目~人生の選択 (9) vol.9「初めての、ナンパ」【15歳】
「どこの高校ですか! デートするんですか!」「電話番号、渡すんスかああああ!」と食いついてきた。
そのとき急に、素っ裸で往来に立たされたような恥ずかしさが襲ってきたのを、よく憶えている。
当時の私は自分自身のことを、男でも女でもない存在だと思っていた。制服以外でスカートを穿く機会はなかったし、靴やカバンなどもメンズブランドをよく買って、カラオケでは男性ボーカルばかり歌っていた。男になりたいとか男物が好きだというのではなく、女になれないし女物に違和感があったから、そうなった。
女子校生活が10年も続けば、よほど注意深く「女の子らしさ」を維持しない限り、自然と性別があやふやになる。学内では心にサラシを巻いて「男役」として振る舞っていた。そのほうが生きやすかったからだ。
私と同じく、あまりの男っ気のなさに自分が女であることを忘れてしまったような後輩たちに聞かれた「ナンパされたんスか!」は、そのサラシがほどけていくような言葉だった。
○恋とは似て非なるもの
ああそうか、本物の人間の雄がやって来て、雌としての私を値踏みして、それで連絡先を交換しようというのだな。これは、女子校の中で「男役」である私の下駄箱に同性の後輩たちがラブレターを投げ入れるのとは、別の現象なのだ。