桜の撮り方 2015、咲きはじめはマクロやボケ味を活かして - キヤノン「PowerShot G7 X」で実践
ひと足早く咲く桜の花を撮るために、南国・九州の果て鹿児島にやって来た。持参したカメラは、1.0型センサー搭載のコンパクト機、キヤノン「PowerShot G7 X」だ。広角から中望遠までをカバーする光学4.2倍ズームレンズを備えつつ、ポケットに収まる薄型ボディなので、旅の相棒には打ってつけ。大げさな機材を使わずに、気軽だけど本格的に楽しむ桜撮影のコツを紹介しよう。
最初に向かったのは、鹿児島を代表する観光名所のひとつ「仙巌園(せんがんえん)」だ。1658年、島津光久によって築造されたという、歴史ファンにはたまらない由緒ある庭園である一方、毎年2月から4月にかけてはさまざまな品種が楽しめる桜の絶景スポットでもある。訪れた日はちょうどカンヒザクラ(寒緋桜)が満開。濃いピンク色で釣鐘状の形をした花が咲く、南国に多い桜である。
○マクロモードで花に接近して画面を整理する
満開のカンヒザクラをまのあたりにすると、自然と気持ちが高ぶり、撮影意欲が刺激されてくる。下の写真のようにクローズアップで桜を撮る際は、花弁にキズや欠損がなく、バランスよく整った状態の花を見つけることが大切。離れた距離から全体を眺めるときれいに見えていても、接近すればするほど、アラが目立つことがあるからだ。
きれいな花が見つかったら、できるだけ背景がシンプルになるようなカメラアングルを選ぼう。青空や草木、芝生、建物の壁面など、単色に近い背景がベターだ。そして、周辺に余分な被写体が写らないように、その花に接近して撮影する。中途半端な距離感ではなく、撮りたいものにグッと近寄ることが、どんな撮影でも基本である。
PowerShot G7 Xは、35mm判換算で24~100mm相当という広いズーム域を持つので、桜のような撮影ポジションが限られる被写体であっても狙いどおりの構図で撮りやすい。
しかもマクロモードはワイド側で最短5cm、テレ側で最短40cmまで近寄れる。小さな花も大きく捉えることが可能だ。
○ボケと光量をコントロールして一歩上の桜写真を
よく晴れた天候に満開の桜、そして光学4.2倍ズームにマクロ機能。これだけ好条件が揃えば、たとえ押すだけのフルオート設定であっても、きれいな桜写真になるだろう。とはいうものの、誰が撮っても同じ写真になるのはつまらない。ここからは少し工夫を加えて、一歩上の桜写真を目指していこう。
そんな工夫のひとつが「ボケ」のコントロールだ。PowerShot G7 Xは、ワイド側でF1.8、テレ側でF2.8というレンズ開放値の明るさが持ち味のひとつ。
焦点距離や撮影距離が同じである場合、開放値は明るければ明るいほど(絞りのF値が小さいほど)、ピントを合わせた部分の前後がボケやすくなる。つまり、絞り優先AEモードやマニュアル露出モードを選び、絞り値を小さくセットすることで、ボケを生かした写真が撮れるというわけだ。
上のカットは、ズームをテレ端(望遠端)にして、絞りを開放値のF2.8で撮影したもの。背後の桜を美しいボケとして表現できた。なお、こうした明るい屋外で絞り開放値を利用する際は、PowerShot G7 Xに内蔵された「NDフィルター機能」をオンにすること。光量を抑えることで露出オーバーになるのを防ぐ機能だ。
もちろん、常に何もかもぼかしたほうがいい、と言うつもりはない。被写体によっては、くっきりと写したほうが映えることもある。
下の写真は、F11まで絞り込み、背景の枝の様子がわかるように写したケースだ。PowerShot G7 Xでは、レンズの周りにあるコントローラーリングを回転することで絞り値を素早く調整できるのが便利。ボケを表現したければ絞り値は小さく、全体をくっきり写したければ絞り値は大きく。絞り値は狙いに応じて使い分けるようにしたい。
●構図に奥行きを与える「前ボケ」マジック
写真のボケには、ピントを合わせた被写体の後ろに生じる「後ろボケ」だけでなく、手前に生じる「前ボケ」の表現もある。ただ何となく写すのではなく、意識して前ボケが生じる構図とアングルを探ってみよう。具体的には、撮りたい花とレンズの間に別の花を部分的に写し込むこと。そして、絞りは小さい値にセットする。
それだけでいい。
なお下左の写真では、絞り値をF2.8にセットして前ボケを写し込んだ以外に、もうひとつ小ワザを活用している。それはストロボを強制発光モードにして手前の前ボケを明るく照らしたこと。ストロボ非発光で写した下右の写真と見比べると、ストロボの効果がわかるはず。これも、狙いや好みに応じて使い分けるといいだろう。こうした明るい屋外でもストロボ発光ができるのは、レンズ一体型カメラであるPowerShot G7 Xの強みのひとつだ。●主役と脇役を設定して自分だけの桜写真を目指す
続いて、仙巌園からほど近い場所にある吉野公園を訪れた。こちらは、桜の満開には少し早かったが、1本の河津桜だけはみごとに咲き誇っていた。
24mm相当になるズームのワイド側を使って、広々とした構図でその全体像を捉えた。
このカットは、構図的には悪くないが、このままでは風景の全体を写しただけの説明写真である。ここに桜が咲いているという事実は伝わるが、それ以上でもそれ以下でもない。趣味として写真撮影を楽しむ人なら、単なる説明カットではなく、「何をどんなふうに表現したいのか」ということを考えながら撮ることをオススメする。
例えば同じシーンを撮る場合でも、下の写真は、桜の下に咲いていたスイセンを意識して画面に取り入れた例。冬の花であるスイセンとコラボレーションできるのは、この時期に咲く河津桜ならではの競演といえるかもしれない。
次のカットは、カメラ位置を一歩下がることで、手前に咲いていた白梅の木を写し込んだ例だ。青空を背景にして、桜のピンクと梅の白を対比させるような構図を選択した。
さらに、梅の花を前ボケに利用して華やかさを強調したり、遠くに見える飛行機を画面のアクセントとして写し込んだりしてみた。同じ場所であっても、アイデア次第で、撮り方のバリエーションは無数に広がっている。
こうした、さまざまなバリエーションを撮るためのコツは、桜だけでなく、桜以外の被写体にも目を向けること。「主役」はあくまで桜だが、その主役を引き立たせるための「脇役」となる被写体を探すのだ。つまり、これらの写真では、スイセンや白梅、飛行機などが脇役に相当する。
今回の旅の機材にPowerShot G7 Xを選んだ理由のひとつは、軽いフットワークでさまざまな被写体を狙い、バリエーション豊富な桜写真を撮るためだ。その役割をきっちりと果たしてくれたといっていい。
最後に、桜島を脇役にした桜写真をお見せしよう。撮影地は、先ほどの仙巌園。モクモクと立ちのぼる噴煙を背景に赤いカンヒザクラが咲き誇る、ここ鹿児島ならではの写真となった。
ここで使った小ワザは、今流行の「自撮り棒」+PowerShot G7 XのWi-Fi機能だ。これについては再来週に詳しく紹介する予定だ。次は、河津桜の本家本元、静岡県河津町に行ってきます。