女の節目~人生の選択 (14) vol.14「初めての、就職」【23歳】
なぜなら私は2004年に就職して、それからは出版社勤務の編集者になったので。
探していたのは2003年初夏の日記だ。就職活動中に何を書き残していたのか知りたかったのだが、2月、3月、4月、5月と書いて、次は内定式を済ませた10月まで飛んでいる。本命企業の選考過程についてはいっさい伏せてあった。おまえ、案外ちゃんとしてるじゃないか。就職した春には過去の日記や趣味のページなどを閉鎖して、以後はインターネット上で無責任な発言をするのは控えよう、ときっぱりケジメをつけたりもした。すぐ戻ってきちゃったけど。
それにしても、当時の私はあの日のことも何も書かなかったのか、と驚く。
「初めての、就職」でお世話になった、私が社会人としての第一歩を踏み出したその出版社の、面接をすっぽかそうとしたときのことを。
「え、その日じゃないとダメなんですか? どうしても大事な用があって、朝から大学院の研究室に居ないといけないんですけど。一次面接ってまだ人数も多いでしょうし、数日に分けて実施するんですよね。翌日か前日の組に入れ直してもらうことって、できませんかねぇー?」
研究室棟の階段の踊り場で受けた電話の向こうで、総務部の男性が言葉を失い、息を飲む音が聞こえた。