女の節目~人生の選択 (14) vol.14「初めての、就職」【23歳】
とくに公共放送の番組制作に興味があって、予行演習のつもりで民放テレビ局を何社か受けた。東京在住なので交通費などたかが知れているし、受験料を取られるわけでもないのだから、本番前にいくらか場数を踏んでおいたほうがよいと思ったのだ。
最初に採用が始まるのはアナウンサー職で、パステルカラーのツイードジャケットが咲き乱れる華やかな面接会場では、ふわふわした女子学生がキラキラ輝きながらハキハキした黄色い声でしゃべり続ける合間に、学ランに腕章をつけた体育会系男子学生が応援指導のパフォーマンスを実演していた。「スナップ写真」とある欄に、祖母の家の門前で撮ったようなやつを貼りつけてきたのは私ともう一人二人だけで、残りはみんな伊勢丹写真室と思しき、斜めに構えた上目遣いの笑顔が眩しいブロマイド、もといポーズ証明写真だった。「制作職の試験も、この調子で頑張ってね」とにっこり微笑まれて落ちた。
お台場にあるテレビ局の二次面接も忘れがたい。対峙したのは真っ黒に日灼けしてハワイの空色したピンストライプシャツの裾をまくり、第四ボタンくらいまではだけて胸毛と金鎖をのぞかせたチョイ悪オヤジだった。すごい、これでピンクのセーターを肩から羽織ってたら完璧じゃん! ギロッポン! と快哉を叫びたくなるほどの絵に描いたようなギョーカイ人である。