コピーライターに聞いたコミュニケーション術(尾形真理子さん) (2) マイナスな状況を改善できる能力こそが、コミュニケーション能力
何本コピーを書いて持っていっても決めてくれないクリエイティブ・ディレクターとか、いやなわけですよ(笑)。若い頃は、「なんで決めてくれないんだ」「優柔不断じゃないか」と思っていました。でもそれだと不満でしかないから、先に進まないんです。"決めない"とはどういうことなんだろう? と、知ることを目的にすると、見方が180度変わりました。
――それは具体的な経験ですか?
そうですね。自分の中でかなり印象深い出来事だったのですが、決めない人のことを知ったら、それは"待てる人"だったんです。決められないのではなかった。たくさん考えて、もっともっと可能性を探ることを許してくれて、こちらが提案するものや書くコピーの精度があがってくるのを待てる力がある。
「なんてありがたいんだ!」と、驚いた経験でした。
「待つ」というのは、相手を信じてないとできないし、もっと言えば自分の答えを持っていないと怖くてできません。もちろん、ただただ決めない人もいます(笑)。そして単純にわたしが書けてないから、どうやっても選ぶコピーがないということも。それとはレベルの違う「待てる」能力に気づいて学ぶことができたのは、自分のなかで転換してみたおかげだと思います。