くらし情報『このコマに描かれているのは昭和19年4月17日 -『この世界の片隅に』片渕須直監督と原作者・こうの史代の真剣勝負』

このコマに描かれているのは昭和19年4月17日 -『この世界の片隅に』片渕須直監督と原作者・こうの史代の真剣勝負

を考える場面で、監督は"当時のこのキャラメルは10銭だから、3箱は買えないのでは?"と検証する。すると原作者のこうの氏は、そのキャラメルには箱が正方形の10粒入りのタイプがあり、そちらは5銭だったと返す。原作者に聞けば一瞬で済む疑問点に、作者と同等以上の労力と情熱を傾けるところに片渕監督らしさを感じる。これは監督と原作者の真剣勝負でもあるのだろう。監督は「それを同じ魂で作る」と表現した。

そんなこうの氏と監督の執念が感じられるエピソードのうち、もっとも鮮烈だったのが、呉の港に戦艦大和が入港する一コマに関するトークだ。昭和19年に大和は入港しているのか? 片渕監督は同年の呉港の軍艦の出入りを全てチェックしデータ化した結果、劇中のシーンに一致するのは昭和19年4月17日でしかありえないことを突き止め、当日の天候、気温、遠方の視界などを調べあげ、そのコマが実にリアルに描かれていることを確信する。そのことをぶつけられたこうの氏が「一言調べました」と返したというからたまらない。
戦中のすずが、雑草を使った料理をしているのを描くのに、こうの氏は実際においしく食べるためのレシピを考案し、片渕監督はそれを実際に作ってみる。

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