ロケットから脱出せよ! - 「ドラゴンV2」宇宙船のちょっと変わった初飛行 (1) 宇宙飛行士の命を救う「打ち上げ中断システム」
○打ち上げ中断システム
今回のドラゴンV2の飛行は、「打ち上げ中断システム」の試験を目的としたものだった。打ち上げ中断システム(Launch Abort System)、もう少し崩していうと脱出システムは、宇宙船を載せたロケットに問題が生じた際に、搭乗している宇宙飛行士を脱出させる役割を持つ。
例えば、発射台の上で打ち上げを待つロケットが突如爆発したとすると、その炎はすぐに宇宙船を包み込むことになり、とても宇宙飛行士が宇宙船のハッチから逃げ出すような暇はない。また飛行中にロケット・エンジンが止まったり爆発したりしても、やはり逃げ出す暇はない。そもそも飛行中の速度や高度を考えると、外に脱出すること自体がほぼ不可能だ。
そこで、米国最初の有人宇宙船「マーキュリー」や、月に行った「アポロ」、またソヴィエト・ロシアの「サユース」、そして昨年試験打ち上げに成功した、NASAが開発中の「オライオン」では、強力なロケット・エンジンを使って、宇宙船ごとロケットから引き剥がすという方法が採用されている。このシステムは宇宙船の先端に装着されており、その姿がまるで塔のように見えることから「アボート・タワー」