ロケットから脱出せよ! - 「ドラゴンV2」宇宙船のちょっと変わった初飛行 (1) 宇宙飛行士の命を救う「打ち上げ中断システム」
サユースTの脱出劇でも、宇宙飛行士は命こそ助かったものの、ひどい打撲を負ったと記録されている。大事には至らなかったそうだが、打ち所が悪ければ宇宙飛行士としての道を絶たれることもあっただろう。また、アポロ宇宙船の脱出システムは、サターンVロケットとの組み合わせにおいては「あくまで気休め」のようなものであったという証言があり、特にロケットの離昇から2分半の間は、脱出システムによって無事に脱出することは、ほぼ不可能であったという。
ちなみに、アボート・タワー形式の脱出システムはすべての宇宙船に搭載されたわけではない。ソ連最初の宇宙船である「ヴァストーク」や、米国の2人乗り宇宙船「ジェミニ」では、戦闘機のように座席だけが射出されるシステムが使われた。
ソ連の「ヴァスホート」宇宙船にいたっては、脱出システム自体がなかった。これはヴァスホートが、1人乗りのヴァストークを無理やり3人乗りに改造した宇宙船であり、脱出システムを搭載する余裕がなかったためだ。
また、米国のスペース・シャトルも脱出する術は限られていた。
例えば打ち上げ時には、そのまま滑空してケネディ宇宙センターの滑走路に降りるとか、あるいは大西洋を越えた欧州やアフリカ大陸にある滑走路に降りるとか、あるいはそのままいったん軌道に乗り、適当なタイミングで帰還するといった策が用意されていた。