合意に向けた動きをみせるTPP
○TPP(環太平洋経済連携協定)
TPPとは、太平洋を取り巻く国々による経済連携をめざす協定で、現在は日米を含む12カ国が合意に向けて交渉に参加しています。正式名称は「環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)」で、略してTPPと呼ばれています。
TPPは、アジア太平洋地域という広域・多国間におけるEPA(経済連携協定)に位置付けられると考えられます。EPAとは、複数の国・地域間で、貿易に留まらず、投資やヒト・サービスの移動なども含めた経済の幅広い分野で連携強化を目指す協定です。関税引き下げなど貿易自由化を目指すFTA(自由貿易協定)よりも広い分野を対象としていることが特徴です。
TPPでは、関税撤廃などのモノやサービスのやり取りの自由化に加え、国境を越えた金融サービスのルール作り、海外企業による公共事業への入札など、21分野で新たな自由貿易の枠組みを作り、経済成長を底上げするべく、交渉が進んでいます。しかしながら、関税撤廃の手法や知的財産の保護など、一部の分野では国・地域間での隔たりがみられ、交渉が難航しています。
TPPに日本が参加した場合、関税撤廃・引き下げにより日本の輸出産業の競争力が強まることや、手続の簡素化などにより日本企業の海外進出が活発になるといった経済への好影響が見込まれます。こうした貿易などの取引拡大を通じて、雇用や設備投資の拡大など、国内景気の押し上げにつながることも期待されます。
一方で、域内で生産された安価な輸入品が日本に流入することも想定されます。特に、農業などの分野では国内生産の減少につながり、日本経済にマイナスの影響をもたらすことが懸念されています。ただし、輸入品により食料品などの価格が押し下げられることが、家計への恩恵となる面も考えられます。
TPPの交渉に参加している12カ国のGDPは世界の約4割を占めており、EU(欧州連合)を上回る規模であることから、実現すればTPPは世界から注目される経済圏になるとみられます。
ステップアップ
2013年の内閣府の試算では、TPPで関税が即時に全て撤廃された場合、日本の実質GDPを3.2兆円増加させる経済効果が見込まれています。
○TPA(貿易促進権限)
TPA(貿易促進権限)は、米連邦議会が、米大統領に外国との通商交渉に関する権限を一任する仕組みで、TPPの合意にはTPA法案の成立が不可欠とされています。
米国では、こうした権限は議会が持つと憲法で定められており、通常は大統領が通商協定などの取り決めを自由に行なうことは出来ないとされています。このため、米国と交渉する国が大統領と合意しても、それを議会の決議で修正される可能性があります。
しかし、TPA法案が成立した場合、議会は、大統領が提出した協定案に対して承認するか否かを採決することしか出来なくなり、議会の審議が簡略化され、迅速な通商協定の成立が見込まれます。
足元では、TPA法案が米議会の上院で可決されたものの、下院での可決は難しいとの見方もあり、法案が成立するか否か、不透明感が残ります。ただし、成立すれば通商交渉に関する迅速な意思決定が可能となり、自動車部品とコメに関する調整を巡り難しい交渉が続く日米間の協議が、早期妥結へ向かうと期待されます。
日米の協議が順調に進展すれば、年内にもTPPが合意に達するとの見方もあるなか、TPP合意に向けた切り札として、TPA法案の行方に注目が集まっています。
ステップアップ
日本は自動車部品の関税の即時撤廃を米国に求める一方で、米国は自国産のコメの特別輸入枠を年17.5万トンとすることを日本に求めています。ただし、互いに容易には受け入れられない条件であり、合意へ向け日米間では難しい交渉が続いています。
(2015年6月3日 日興アセットマネジメント作成)
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