女の節目~人生の選択 (19) vol.19 「今」
狭間の時期は、慌ただしい。常ならざる状態が長く続いているのに、その有様を日記に書きとめておく暇もない。後になって鮮やかに思い出すのは「節目」「節目」の出来事だけで、その途中をつなぐ期間どんなふうに過ごしていたのか、「初めて」の一歩手前にどんな気持ちでそこへ踏み出していったのか、人は簡単に忘れてしまう。
今は、今で、これまで通り過ぎてきた「節目」とは違う。ここから先に起こることは、まだ自分のものになっていないし、先取りして体験として書くことはできない。0歳からの人生を書き続けて、とうとうそんな地点にまで追いついてしまった。
今、から、ちょうど一箇月後には、私はまた新しい場所へ引っ越している、予定である。ただし、月末に大使館からちゃんとビザが下りていればの話。
次なる「節目」、初めての海外生活が始まる。
○まだ見ぬ日々へ
「今すぐやるべきこと」リストに則って行動の優先順位を決めていたのは、20代半ばくらいまでだったろうか。大学を卒業した頃か、就職先で落ち着いた頃か。それまでは、いついかなるときも、すべきこと、優先度の第一位が、はっきり決まっていたように思う。無事に春学期の単位を取得すること、月末までに目標金額を貯めること、一生使える書類用キャビネットを見つけること、といった明確なゴールがあり、もちろんそれなりに迷いはあったが、おおまかな方角は見失っていなかった。