田中泯、世の中の“分かりやすさ”に違和感…葛飾北斎の演じ生き方に共感も
偶然がもたらしてくれたたくさんのものとともに、自分は一瞬一瞬を過ごすことになる。ほとんど偶然ですよね。自分が決めたものではないものばかりのなかで、生きているわけです。でも少なくとも、自分の1歩、1日、一瞬というのは、自分から始めることができるはずだというのは思います。
○■「私の」踊りなんて、そんなこと言えるはずがない
――田中さんが映像面で活躍されるようになったのは57歳以降ですが、これまでの表現の仕方とは全く違いますね。
映像の世界といってもピンからキリまであるだろうし、これも偶然に近いのかもしれない。そこに集まってきた人たちでチームができる。このチームの形というのは、ひとつとして同じものがないわけです。
それが場を作り、瞬間を作り、それが結像したものとして残る。それをさらに編集して宣伝をして人々のところに届く。スリル満点ですよね。一体だれがどうやってコントロールしてものにしているのか。ひょっとしたら偶然のほうが強いかもしれない。
――ライブでおひとりで踊っているときより、さらに統制が効かないと思いますが、スリル満点だと。面白いですか?
面白いですよ。僕が踊っている踊りは映像にはなりませんと若いときからずっと言い続けてきました。