2015年12月14日 11:30
テレビ・ワンシーン考現学 (21) 青春ドラマのエンディングは、とにかく無人駅で見送る
島の友人達が照れ隠しのように「帰ってくんなよー」と叫び、隣の男性は「ざけんじゃねー」と叫び、親族が笑い転げている。いざ船が動き出すと、船の下からは「がんばれよー」との声が揃い始める。隣では男性がこみあげるものをおさえながら、声を出さず、手だけを振ってごまかしている。ここでもまた3泊4日の武田までこみあげてきたのであった。
○そんなにみんな無人駅で恋人と別れてきたのだろうか
映画やドラマのシチュエーションは、隣接する体験を持つほうが感情移入しやすくなるのは確か。無人駅のホームで「わたしたち、遠距離でも大丈夫だよね」「うん、心配するな」と手をつなぐシーンはその感情移入をマックスに持っていく装置だが、なぜ、少しの隣接体験を持たない私まで、その無人駅のシーンに大きな共感を寄せられるのだろう。
カニかまぼこしか食べたことがない奴が美味しいカニの見分け方を述べ始めたら総スカンを食らうが、私は、この手の映画のエンディングを見せられると、いかにも体験したオレの立場として査定を始めるのである。
しかしながら、無人駅での上京シーンの普遍性は、カニかまぼこ的に強められてきたのではないかとの予測もある。