2016年1月26日 12:00
兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃 (47) デザインを学んだカレー沢薫の「卒論」
そんな真正モラトリアムでありながらもグラフィックデザイン学校を卒業した私にデザインをやらせると、数あるフォントの中から、多くのデザイナーをそのダサさから憤死させるという「創英角ポップ体」を必ず選び出してくる目利きぶりを発揮する上、サイズはもちろん48ptぐらいにする。さらに斜体もかけるし、できることならグラデーションもかけてやりたいと思っているが、やり方がわからないので、ビビッドな赤字でキメるのである。
今現在、漫画をいくつか連載させてもらっていて、ある程度連載が続くと、数話分をまとめた単行本が出る(こともある)。漫画の単行本の表紙絵を描くのはもちろん作家だが、装丁は当方でなくデザイナーの仕事だ。作家がデザインまでやるものでなくて本当に良かったと思っている。
もし作家が装丁まで担当することになっていたら、「コミックス全7巻 累計実売数3」とかいう事態が平気で起こったに違いない。「ジャケ買い」があるなら、「ジャケやめ」もあるはずだ。「これは触るだけで自分のセンスが落ちる」と思わせる一品を作りだす自信がある。
このようにデザインスキルは身につかなかったが、自分にデザインのセンスがないということだけは、2年かけてみっちり学んだのである。