2016年1月26日 12:00
兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃 (47) デザインを学んだカレー沢薫の「卒論」
と言って発表すれば、講師陣も「そうか!」となって卒業できるのだ。
やはり卒業要件が緩いと思われるかもしれないが、もちろん3分で作ったようなものは認められない。ただ、3カ月かけて3分で作ったようなものを作るのはOKなのである。専門学校とは(少なくとも私が通ったところは)、「やることに意義がある」という義務教育までしか認められないような理屈を、もう二十歳になろうかという人間に適用してくれるおおらかな場所なのだ。
そして肝心の自分が何を作ったかと言うと、何せ、授業も聞かずにスケッチブックにその時萌えていたキャラの左向き顔ばかり描いていた人間である。成績も悪く、それまで授業での製作物を褒められたこともなかったし、そのイケメンの絵だって、友人などに見せても全く無反応であった。
しかし、イケメンのついでに描いていた猫の落書きに対しては、みんな妙に面白がってくれた。そしてその猫の絵とは、今の私の漫画作品の多くに出てくる猫と全く同じものである。
そのため、卒業制作はこの猫のイラストを何十匹と描いてB1サイズのポスターにして提出したところ、優秀賞を取ることができた。そこで、私の絵はイケメン(レフト)については全くダメだが、猫の絵は他人への訴求力があると気づき、この猫を主役にした漫画を描いて漫画家デビューしたのである。