『キル・ビル』コンビ再び! - 『ヘイトフル・エイト』美術の舞台裏を種田陽平が語る
あるカットでは暖炉から扉までが遠く見えるのに、あるカットでは近く感じたりします。
――しかもピントが浅いから、人物の背景がよくわからない。
種田:映画中盤でシチューを食べるシーンなんか、「えっ、テーブルがあったの!?」って驚くんじゃないですか(笑)。ピアノもそう。最初からあるんだけど、観客が画面に観るものはどんどん変わる。
70mmフィルムじゃないとこうはならなかったでしょうね。もちろんクエンティンは意図的にそうしています。そうでないと、いくらシナリオがうまくできていても、美術が面白いセットをつくっても、お客さんはこの密室劇に30分くらいで飽きてしまうでしょう。
――言われてみれば納得です。
種田:それから光の当て方――撮影監督によるライティングもワンカットごとに相当工夫されていた。これはタランティーノ監督というより、アメリカの考え方なんですが。――というと?
種田:日本やアジアの映画はカットのつながりを重視します。だからカットが変わっても光が当たる方向が変わることを嫌う。その結果、全体的に光を当てることが多いんです。
――強い影がなくて、まんべんなく明るい状況ですね。
種田:ところがアメリカでは、役者と背景を切り離すために逆光でライトを当てることが多い。