ただ、現在設定されている新幹線料金は廃止される在来特急よりも20~30%高いとされ、割引切符も従来の在来特急より高くなるため、地域の人々が日常的に使おうとするインセンティブを喚起するのはさらなる手だてが必要だろう。
○明暗が分かれるJR東日本とJR北海道
想定座席利用率が低いということもあるが、JR北海道にとっては北海道新幹線の開業により年間の赤字が50億円増加するとの見方もあり、運行便数増加のための投資や割引運賃の拡大を行いにくい環境にある。大きな投資をすることなく、新幹線効果による需要増加のメリット(東京=新青森間)を享受できるJR東日本とは、くっきり明暗が分かれよう。実際、鉄道は航空と同様、収受した通し運賃を運行距離で案分するので、東京=函館間に乗車する旅客運賃の8割以上はJR東日本のものとなる。
もともと事業運営が厳しいことを前提として、JR北海道・四国・九州各社に設定された経営安定基金の運用益が低金利で目減りし、親会社の鉄道建設・運輸施設整備支援機構に高金利で逆貸付を行っているものの、事業収支は悪化。その結果、帳尻を合わせるために安全投資が削られて大きな事故を引き起こした現実は記憶に新しい。