2022年6月8日 21:00
鈴木もぐら監督・脚本『万引き裸族』が投げかける哲学的メッセージ――!? 『有吉の壁カベデミー賞 THE MOVIE』
どの作品も、カメラワークからカット割り、映像の質感に至るまで本格的な映画に仕上げられており、「くだらない」ことにお金と情熱をかける構造の面白さに終始ニヤつきながら鑑賞したが、中でも特に引き込まれてしまったのが、『万引き裸族』だ。
金も家も服もない主人公が、ただただ全裸で万引きを繰り返していく様をカメラに収めたというドキュメンタリータッチの同作。裸で登場する芸人たちの滑稽な姿を笑う作品だと思いきや……。
○■常識を疑い始めると見えるものが変わってくる
ファーストカットから「この撮影、大丈夫だったのか!?」と見てる側が心配になってしまう“裸族”を象徴するシーンに衝撃を食らわされる『万引き裸族』。このタイトルは、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『万引き家族』からもじっただけと侮ってはいけない。
本編を見ていると、「万引き」は未会計の商品を衣服のポケットやカバンにそっと入れるというのが常套の手口であるため、全裸で手ぶらの「裸族」が実行できるはずがないという事実を突きつけられる。つまり「万引き」と「裸族」は相容れない言葉―――そう、あの不朽の名作『美女と野獣』と同じ系譜なのだ。