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宝塚の演出家・木村信司が、若手ジャニーズとつくる音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』にかける思い

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宝塚の演出家・木村信司が、若手ジャニーズとつくる音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』にかける思い

●宝塚とジャニーズの共通点
1980年に発売された村上龍の小説『コインロッカー・ベイビーズ』(講談社)。発行から36年の時を経て、このたび舞台化される。乳児の頃にコインロッカーに残された青年・ハシを橋本良亮(A.B.C-Z)、キク役を河合郁人(A.B.C-Z)が演じる。昆夏美やシルビア・グラブといったミュージカル界の実力者、更にはROLLYや芋洗坂係長など豪華なキャスティングで一体どのような世界が展開されるのか。

脚本・演出を務めた木村信司は、宝塚歌劇団に所属し、ふだんは「清く、正しく、美しく」を信条に舞台を作り上げている。今作にかける思い、宝塚との違いなどについて、改めて話を伺った。

○宝塚では絶対にできない脚本にチャレンジした

――木村さんは宝塚歌劇団の演出家ですが、今回はなぜ『コインロッカー・ベイビーズ』に関わることになったのでしょうか?

頼まれて書いたわけではなかったんです。自分は宝塚をすごく愛していて「清く、正しく、美しく」という教えのもとに頑張っているのですが、「宝塚では絶対にできないような脚本を書けるんだろうか」という思いがあり、一番遠い題材を考えたときに、この作品が浮かびました。


原作が出版されたときには面白いSF小説として読んだんですが、21世紀になった時に読み返して、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』と共通するところがあるなと。「僕たちを殺すな、生き残る。もう一度現れる」という子供の叫びを聞いた気がして、脚本に起こしました。2001年頃の話です。

――書いたものを形にしようと動き始めたのはいつからですか?

いろいろな伝手を使いまして、5年前、村上先生の手元に脚本と企画書が届きました。それから10日も経たないうちに、ぜひやってほしいという話が来まして、びっくりしましたね。「条件もそちらの思うように」というお話でした。

あとになってから知ったのですが、映画界では常識となっているくらい難攻不落の著作権だったそうです。
舞台化が動き出したのは、村上先生に「やってよろしい」と言っていただけたことがすべてでした。

――そこはやはり脚本の力が大きかったのでしょうか。

もし感じ取ってもらえたものがあったとすれば、熱だったんだろうなと思います。○その瞬間、輝くことに命をかける

――主演がジャニーズの方で、木村さんは宝塚の方ですが、宝塚とジャニーズの違いは感じますか?

共通点を話した方が早いかもしれません。一番の共通点は、皆、良い子だということです。舞台には正直に人柄が出てしまいますし、何を隠していても根底が出るので、見ているとよくわかります。うちのタカラジェンヌたちと同じ情熱をもって舞台にかける男の子たちだと思います。

――パフォーマンスの点などではいかがでしょうか?

その瞬間輝くことに命をかけるようなパフォーマンスは、共通しているところかもしれません。
スキルはもちろんですが、一瞬一瞬にかける情熱が、より大きな魅力になっています。

――主演のお二人の印象はいかがですか?

公演も何回か見せていただいて、ジャニーズ事務所が手塩にかけて育て上げた舞台の申し子達だなと思っています。河合くんは、口調からも感じられますが、ガッツがありますよね。橋本くんは、見た目もロマンティックじゃないですか。先日の製作発表では、シルビアさんを自然とエスコートしていて、女の子がぽーっとなるのは無理もない(笑)。

ライブでお客様にアピールすることをずっと勉強してきた2人ですから、これから脚本に2人の想像力を加えて、冒険していけることを楽しみに思っています。やりたいことはミーハーなこと。河合くんの曲にガッツがあった、橋本くんクールだったね、昆ちゃん可愛かった、シルビアさんの歌が心にしみた。
そういったミーハーをつなぎ合わせて、お客さんに喜んでもらえるものを作りたいと思います。

●入るまで、宝塚を観たことがなかった
○脚本・演出家を目指したきっかけ

――木村さんご自身についてお聞きします。脚本・演出家を目指したきっかけについて教えて下さい。

脚本を書こうと思ったのは、小田島雄志先生訳のシェイクスピア全集を全部読んだことがきっかけなんです。それまでもずっと小説などは書いていたのですが、自分はリアルな話よりも、ロマンティックな物語に資質があるのではないかと思っていました。そこへシェイクスピア全集を呼んで「脚本家だ!」と。

実は僕、少し変わった経歴なんです。"引きこもり"なんて言葉もない時代でしたが、大学に入る前の3年間、本ばかり読んで過ごしていました。
シェイクスピア全集を読んだことによって、「ぜひ大学で勉強したい」と受験して、合格して入学したあとはずーっと脚本を書いていました。――そのころから、宝塚歌劇は視野に入っていたのですか?

実は、入るまで観たことがありませんでした(笑)。就職活動時に台本を送ったところ、試験に通ったのですが、最初に上演された『扉のこちら』と言う作品は、宝塚を観ないままに書いた試験台本そのものなんです。

宝塚歌劇について知っていたのは「男役さんという、素敵な人がいるらしい」ということだけ。イメージする素敵な人を主人公で書いてみたら通ったので、やはりもともとロマンティックな要素を持っていたのではないでしょうか(笑)。

――宝塚以外の作品も書いていらっしゃるんですね。

時間があくと腕が落ちて来ますので。上演するあてもないままに書いている作品も、今4~5作はありますね。
これからの宝塚のためのプレゼンとして書いているものもあれば、「これは宝塚でできない」と思って書いたものもあります。アスリートと一緒で、日々の研鑽ですね。

○単に観劇ではなく、経験として残るものに

――宝塚歌劇団の演出家の方も、宝塚歌劇以外の外部の公演の演出をされたり、活躍されていますね。

宝塚には、優秀な脚本家・演出家がたくさんいます。外部舞台に出すのは、他流試合で腕を磨いて、戻ってきたときにその経験を活かして、仕事に励んで欲しいということじゃないかと思うんです。やっぱり一定期間は人材を外に出すことにはなりますので、勉強の一貫ととらえているのではないかなと。

――留学のようなイメージでしょうか。脚本家同士、演出家同士など内部の交流はあるのですか?

タカラジェンヌも含めて、スタッフ皆が家族なんです。
宝塚という家に住んでいます(笑)。

――今回の作品は「清く、正しく、美しく」とはかなり離れた世界観ですが、演出プランの違いは出てきますか?

「清く、正しく、美しく」は宝塚では絶対に外せない、大切な教えですが、僕自身の役者に対するスタンスは、宝塚で演出するときと変わりません。これまでもモーニング娘。と『リボンの騎士』、声楽家団体「二期会」と一緒に『シューベルト』など外部舞台の経験がありますが、スタンスを変えたことなく、裸のままでいって、可能性を探っていきます。

――客層の違いは意識されますか? 今回は舞台を観慣れている方も多いのかなと思います。

幕が開くまで、どんなお客様がいらっしゃるのかはわかりませんから。宝塚にしても、大劇場と地方公演では変わってきますから、見慣れている・見慣れていないということではなくて、お客様に何か一つの経験として残るものにしたいと思っています。単に観劇ということではなく、Experienceとして、という気持ちはありますね。

音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』
公演日程:2016年6月4日~2016年6月19日
会場:赤坂ACTシアター
原作:村上龍
脚本・演出:木村信司
音楽:長谷川雅大
出演:橋本良亮(A.B.C-Z) 河合郁人(A.B.C-Z)
昆夏美 シルビア・グラブ 真田佑馬 芋洗坂係長 ROLLY

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