2018年2月17日 10:00
『サニー/32』は北原里英の極限を引き出した映画バトルロイヤルだ!
「ごちゃごちゃ言わんと誰が一番強いか決めたらええんや!」と言ったのは全盛期の前田敦子ではなく前田日明だったが、まさに北原がプロレスラーなら、門脇は総合格闘家みたいなものだ。年齢もわずか1歳差と同世代で、このマッチアップは危険すぎる。一歩間違えば、まったく噛み合ないドラゴンストップ必至の潰し合いになってしまう。果たして、映画として成立するのだろうか?
結果的に大成功である。『サニー/32』は危険な賭けに勝った。ただ、もし全編を通して北原と門脇がシュートマッチでやり合っていたら観客の神経も疲れ果ててしまったと思う。そこで緩衝材としての役割を果たすのが、ピエール瀧とリリー・フランキーの日本映画界が誇る悪役コンビだ。
物語序盤は豪雪地帯の閉じられた部屋で監禁される藤井に対する、凶暴な中年男性の柏原勲(ピエール瀧)と小田武(リリー・フランキー)を中心としたグループのサニーへの歪んだ愛情を軸に進む。
ここで、柏原や小田を滑稽だと笑うのは簡単だが、何かを好きになるという行為は、多かれ少なかれ“過剰すぎる片想い”である。握手会で会うアイドル、球場でサインを貰うプロ野球選手、ただそれだけの行為でファンは幸せな気分になれる。