理研など、「未成熟型ドリコールオリゴ糖」だけを分解する仕組みを発見
さらに、未成熟型ドリコールオリゴ糖の分解反応が、グルコースではなく、GDP-マンノースの減少によって誘導されるかどうかの検証も行われた。通常、GDP-マンノースは、グルコースから主に合成されるが、マンノースからの合成経路もある。
そこで、グルコースからGDP-マンノースが合成される経路に必須な「MPI(マンノース6リン酸イソメラーゼ)」を欠失した細胞が用いられた。なおMPIとは、解糖系の中間代謝産物である「フルクトース6リン酸」と「マンノース6リン酸」の相互変換を触媒する酵素だ。マンノース6リン酸は、糖ヌクレオチドの1つであるGDP-マンノースの生合成に必須である。このため、MPIはグルコースを炭素源としたGDP-マンノースの生合成経路において不可欠というわけだ。このMPIを欠損した細胞の培地内のグルコース濃度を変化させずにマンノースだけを取り除くと、GDP-マンノースの合成経路を遮断することが可能だ。その結果、リン酸化糖鎖の蓄積が観察できたのである。
以上の結果から、低グルコース環境ではGDP-マンノースの合成が減り、それによって成熟型ドリコールオリゴ糖の構築が停止し、生じた未成熟型ドリコールオリゴ糖がピロフォスファターゼによって速やかに分解されることが判明したというわけだ。