塚本晋也が初の時代劇を監督「鉄と人との関わりには変わりがない」1本の刀に込めた思いとは?
いわゆるカッコいいチャンバラシーンは全然出てこなくて、萩原健一さん、尾藤イサオさん、小倉一郎さん扮する刀もロクに使えない3人が、しょうもない渡世人となって旅をする青春映画がすごく好きだったんです。
――試写会で『斬、』を見た方から、「『鉄男』以降、塚本監督はずっと鉄に対する愛を持ち続けている」と指摘されていましたね。
確かにその通りで、「鉄と人との関わりには変わりがない」ということに自分でも気づきました。とはいえ、普段僕が映画を作るときは、あまり理屈では考えていなくて、ほとんど感覚的に作っています。「こういうことを言うために、こういう筋にしよう」というものではなく、自分にとって一手一手が嘘にならないように、筋を書いていくという感じなんです。『斬、』に関しては「一本の刀をグーッと食い入るように見つめてしまう若い浪人の映画にしよう」という、一つの考えだけが最初に浮かびました。そこから「どうして彼は刀をそんなに過剰に見つめるのか?」という風に、段々と自分で紐解いていく。つまり「全て紐解き終わった時」こそが、映画が完成する瞬間なんです。
――なるほど、とても興味深いです。
ちょうど『野火』が終わった頃に「刀を過剰に見つめる浪人の姿」