経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 (11) 自分を裏切った人にも「感謝」の念を - 小林照子氏著『人を美しくする魔法』
その理由とは? 小林さんに伺いました。
「Aさんとの一件は、私に人生のテーマを投げかけてくれました。
当時、お金がなくなった後、私は口外せず、Aさんにも伝えていませんでした。
ですが、Aさんの出張の報告書には、私について「あの子はぼんやりしているから心配だ」という不自然な表記があったのです。
その後、私は教育部門に異動し、何の因果かAさんを含めたスタッフに研修する立場になりました。
Aさんとも何度か顔を合わせることになりましたが、もちろん、こちらもあちらも、あの時の話は一切しません。
そうした中、何年かして、Aさんが退職することになりました」「その時、彼女は私の手を強く握って、涙ぐみながら「さようなら」と言ったのです。
あの時のAさんの悲しそうな表情は今でもよく覚えています。
ずっと後ろめたい気持ちを抱えていたのでしょう。
その時にやはり、彼女が犯人だったのだと確信しました。ただ、何十年も封印してきたこのAさんとのエピソードは、『自分がどんな人間として生きていくのか』というテーマを突きつけてくれたのです。
反面教師との出会い、2年間かけて返済した出張旅費も、自分の人生のテーマと向き合うための授業料だったと思えば、決して無駄ではありません。