奥様はコマガール (39) のんびり屋の妻と驚異的な着物騒動
したがって、今回も結婚式が終了してすぐに、訪問着を大阪の実家に送り返す予定だった。
僕の実家は築70年以上のおそろしく古い日本家屋で、風通しが良く、乾燥した和室もいまだに多いため、着物の保管に適している。
着物は湿度でいたむ場合があるからだ。
「着物がいたむと良くないから、早く大阪に送りなよ」。
僕が促すと、チーは当然といった表情で「もちろん、そうするつもり」と答えた。
宣言通り、チーは使い終わった訪問着を丁寧にたたみ、保管箱にしまう。
あとは宅配業者に連絡して、集荷を依頼するだけだ。
ところが、ここからが驚異的なスローペースだった。
結婚式が終了して1週間、2週間と経過しても、一向に集荷を手配する兆しがなく、いつのまにか年末が迫ってきたのだ。
僕はだんだん心配になってきた。
結婚を機に購入した夫婦の一生モノの家宝が、1カ月以上も寝室の床に無造作に横たわっているのだ。
いやはや、なんという雑な扱いだ。この光景を見て、不快に思わない夫はいないだろう。
おまけに我が家の寝室はそんなに広いわけではないため、それが床に転がっていると、足の踏み場が一気になくなってしまう。