岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (11) 製造業を見捨ててまで、インフレ対応を重視 - ”人民元”変動幅拡大の舞台裏
米ドルは中国元に対しては究極のドル高、逆に日本円に対しては究極のドル安となったわけです。
米国からみた世界の工場としての役割がそれまでの日本から中国へとシフトした期間であったとも言えるでしょう。
中国の1回目のインフレから2回目のインフレにいたる期間、急激な元安が進んでいるのが図表から確認できるかと思います。
その後、元が米ドルと固定されることによってそれ以上の元安進行に歯止めがかかり、激しかったインフレも落ち着いた状況がわかります。
2005年以降の極めて小幅で段階的な元切り上げが実施されていたときは、世界的にみれば新興国の経済成長と米国の住宅バブルが重なって、食料品や資源価格が高騰していった時期と重なります。
原油価格がうなぎ上りとなり、WTIはピークである1バレル=147ドル台をつけたのは2008年7月でした。
もし元の切り上げが実施されていなければ、この間の中国の輸入物価は上がっていたはずですから、中国のインフレ率ももっと上昇していたでしょう。その後、サブプライム危機が深刻の度合いを増していき、リーマン・ショックへと続きましたので、世界的な経済活動も低迷することとなりました。