岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (11) 製造業を見捨ててまで、インフレ対応を重視 - ”人民元”変動幅拡大の舞台裏
中国にビジネスで頻繁に訪れている友人の話によると、モノにはよりますが、数年前から中国での価格が日本と遜色ないような製品が出てきたといいます。
中国の人件費も年々上昇しており、もはや世界の工場として低賃金労働を提供できるような状況ではなくなりつつあることの象徴と言えるでしょう。
たとえ変動幅が1.0%という微々たるものだとしても、ある程度の期間を経て元高となれば、中国の製造業には大きな打撃となります。
総務省統計局が発表している2009年対GDP貿易依存度によると中国のGDPに対する輸出比率は24.5%となっています。
日本の輸出比率は11.4%ですから、日本の2倍以上、経済成長を輸出に依存しているのが中国です。
日本と比べれば断然比率の高い、中国の輸出の中核を現在なしている製造業を見捨ててまでも、インフレの対応にシフトしてきたー国民生活が深刻な打撃を受け、政治的・社会的な反発が出かねないインフレに対して中国政府は警戒をしているはずです。そしてさらに注目すべきは、以前から主張してきたことではありますが、今年の全人代(全国人民代表大会)においては特に、経済成長優先路線を修正し、量から質への成長モデルへの転換を温家宝首相が強調したことです。