岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (11) 製造業を見捨ててまで、インフレ対応を重視 - ”人民元”変動幅拡大の舞台裏
原油の需要も後退し2008年12月には1バレル=40ドルを割り込むまでに急落をしています。
原油価格そのものが安くなれば、元を米ドルと固定して=元高が進まないようにして、元安水準で維持してもインフレが進むことはありません。
そして世界経済が回復基調となり、原油・食料品などが再度上昇をし始めた2010年の段階では、小幅な元高が進むような通貨バスケット制度に戻しています。
これで中国国内ではインフレ抑制効果が期待できます。
結果的に中国は資源価格の推移や世界経済の動向を見ながら、通貨バスケット制度とドルペッグ制とを上手く使い分けをすることで、これまで長らくの間5%前後のインフレ率にとどめることができた、ということになります。
そして、変動幅を今回1.0%まで拡大させたということは今後、元高方向を中国当局としても望んでいるとも考えられます。
というのも、国内の自動車の保有台数、電力需要の増加を考えれば原油などの一次産品の輸入増加は必至です。
製造業にとっては確かに元安がいいわけですが、輸入インフレを抑えるためには元高であることが望まれます。
これからの世界的な資源価格の高騰を視野に入れているからこそ、変動幅拡大がこのタイミングで実施されたとも考えられます。