2012年5月13日 08:46
読む鉄道、観る鉄道 (8) 『東京駅物語』 - 明治、大正、昭和…、小説に息づく東京駅と人々の生活感
東京駅丸の内駅舎の復原工事が仕上げの段階に入ろうとしている。
大正3年当時の本来の東京駅が姿を現し、今年10月に完成する。
その工事現場の活気と、東京駅に集まる人々の雑踏を感じつつ、100年前から始まる東京駅の歴史に想いを馳せてみよう。
小説『東京駅物語』(1996年刊。
文春文庫版にて発売中)は、明治35年から昭和21年までの東京駅を描いている。
東京駅の開業は1914(大正3)年。
『東京駅物語』はそれより前の明治35年から物語が始まる。
第1話の主人公、立花新平は横浜の実家を飛び出し、東京にやって来た。
パン職人として働こうと思っていたところ、鉄道好きの娘と出会う。
第2話は開業7日後の東京駅待合室が舞台。
主人公は女流歌人。
東京の暮らしに疲れ、実家に帰ろうとしながらも決心できずにいたとき、たまたま居合わせたパン職人の男に話しかけられる。
第2話に登場するパン職人は、第1話の主人公、立花新平だ。
同作品は全9話の短編集で、それぞれの話は独立しているけれど、ある話の主人公が、別の話では脇役として登場する。
東京駅の時の流れの中、登場人物同士の縁がもつれ、ほぐれていく。