奥様はコマガール (49) 父母の思い出話と僕らの思い出作り
還暦すぎの2人が、まるで一気に若返ったかのように見えるわけだ。
これは父母の若いころの写真を見ても、決して伝わってこない感覚である。
大阪の男と東京の女が出会って、すでに40年以上が経った。
その長い歴史のうち数年間は、僕ら子供たちが絶対に知りえない想像上の月日であり、だからこそ、そのころの匂いならいつでも何度でも楽しみたいと思う。
自分のルーツが、確実にそこにあるからだ。
翻って、現在の僕とチーである。
結婚して1年以上がすぎ、そろそろ子供も欲しいと思い始めている今日このごろだが、そうやっていつか生まれてくる我が子は僕らの今の暮らしを絶対に知りえない。だから僕は父母がそうしているように、いつか我が子に新婚時代の思い出を語るのだろう。
「あのころが一番楽しかった」と懐かしむのだろう。
最近の山田家は仕事もプライベートも含めて、ちょっと大変なことが立て続けに起こっている。
結婚1年数カ月目の新米夫婦にとっては正念場のひとつを迎えていると言えなくもないわけで、時に挫けそうになったり泣きたくなったりすることもある。
しかし、もしかするとこれは、僕ら夫婦がいつか我が子に語るための思い出作りなのではないか。