読む鉄道、観る鉄道 (12) 『旅の贈りもの 0:00発』 - ぶどう色EF58とマイテ49のミステリートレイン
は、妻と娘に冷たくされ、会社からも解雇。
「誰もオレのことを気にかけていないんだ」、そんな思いからミステリー列車で家出する。
その先に何が起こるかも知らず……。
網干(細川俊之)は亡き妻の写真を持って旅に出た。
生前にかなえてやれなかった夫婦の旅行を楽しむつもりだ。
そんな網干のそばで一人旅を楽しむミチル(黒坂真美)。
誰彼ともなく話しかけるが、それぞれの孤独な心に立ち入れない。
彼女もじつは挫折を経験していた。
車内は他にも旅人がいる。
しかしほとんどがグループ客でにぎやかだ。
それゆえに5人の孤独が際立つ。
5人は列車内ではすれ違い続けているけれど、目的地「風町」の人々と出会い、優しいもてなしに癒され、互いに打ち解けていく。
風町の人々を演じるのは、郵便局長役に大滝秀治さん、旅人たちをもてなす民家に梅津栄さんなど、渋い役どころだ。
町医者役はシンガーソングライターの徳永英明さんで、挿入歌の『時代』も歌っている。彼は歌手という本業を大切にするため「本作品が最初で最後の映画出演」と語ったという。
だからファンには貴重な役者姿だ。
メインテーマは谷村新司作詞作曲の名曲『いい日旅立ち』で、中森明菜さんの声が旅情をそそる。