岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (19) 日本破綻なら海外逃亡? - 『ミス・サイゴン』が教える”国を捨てる”事の意味
ロンドンもニューヨークも超一流の役者さんであるのは間違いない、歌も演技も素晴らしい、しかし何かが違う-。
はかなげなキムを演じるには海外の役者さんの体格はいささか立派過ぎました。
海外の大御所の演技に威厳は感じてもその重厚感ゆえに、客引きのエンジニアの浮薄さと上昇志向への信念との微妙なバランスが滲み出てこないのです。
人種差別だとお叱りを受けそうですが、そもそもアジア人を欧米の方が演じるには無理があるのではなかろうか―。
貧しさの中で生まれるしたたかさや、アジア人が持つ繊細さやしなやかさの中にある強さのようなものがどうも物足りない。
私の中での国際比較の結論は、キムは本田さん、エンジニアは市村さんということになりました。
相変わらず”危機本”と呼ばれる類が書籍売り場を賑わし、メディアも日本経済に対して悲観論一色のようです。
中には「日本が沈没する」あるいは「日本経済が破綻する」などと言って、資産防衛のために日本を捨てて海外移住を吹聴する声もあります。
国を捨てる、捨てざるを得ない状況であるということはいったいどういうことなのか。
「ミス・サイゴン」では命懸けであることを訴えていますが、本来はそうした覚悟が必要となることです。