イタリア料理のお店なのに名前が“タベルナ”!?シェフにこだわりを聞いてきた
今でこそ、イタリアンバールなど庶民的なスタイルの店が多くなりましたが、当時の日本には、イタリア料理店といえば、デートや接待などでかしこまって行くような店しかありませんでした。
もっと気軽に、イタリアの路地裏によくある居酒屋のような雰囲気の中で、本場の味を伝える店を作りたい、そんな思いで、店名にはトラットリアでもリストランテでもなく、大衆食堂、居酒屋という意味を持つ“タベルナ”とつけました。
――オーナーとは、創業当時から同じ思いを共有して来られたのですか。
いや、実はそうではないんです。
オーナーの思いを理解するまでにはかなり時間がかかりましたね。
私が以前いた店はローマ料理のリストランテで、イタリアで修行した親方の下でかっちりとした料理を出していましたから、余計な飾りなどいらない、シンプルな料理を出したいんだと言われても、最初は違和感がありました。
料理人として、自分の方がイタリア料理はわかっている、という自負もありましたし、当時は何度もけんかしましたよ。でも、しばらくすると、われわれ日本人がどうあがいたところで、子供のころからイタリア料理を食べてきたイタリア人にはなれないと感じるようになりました。