岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (22) 「円安・株高」は本当に”あの発言”が原因か!?--今こそ、冷静な経済分析を
しかし、周知の通り発言は突飛と受け取られ、予想以上の赤字となった貿易収支の発表と相俟って、週明けに円安で反応した状況でした。
こうして実際の為替市場の動向を見る限り、緩和発言だけによって円安に動いたとは言い切れず、日本の政治そのものへの不安や悪化した経済指標など他の材料とタイミングが重なって円が売られた、と見る方が自然です。
財政拡張政策によって実体経済に資金が流れていくことの期待から円安となった部分もありますが、この点については複数政党が訴えていますので、民主党以外になればという反応でしょう。
選挙戦に優位な展開になりそうだと思えば、それを使うのは候補者として当然のことです。
直接引き受けは日銀への政治介入だと批判している政党が、実は日銀へ外債購入を促したりしているわけですから、この辺は有権者である我々が冷静に判断する必要があるかと思います。
誤解なきよう申し上げますが、円安をきっかけに株価が上昇したことが悪いと言っているわけではありません。
政情不安で動く為替市場、そして円安を一義的に好材料と捉えて動く株式市場という具合に、別の要因で各市場は動き出しています。
結果として発生している経済現象に飛びつくのではなく、発生した円安・株高の原因は何かを客観的に判断する--現象ではなく原因を追究する姿勢は、今後どの政党が政権を担ったとしても日本の経済政策を展開する上で必要なこととなるはずです。