親愛なる仕事人間たちへ (2) 働く男の疲労は「媚薬」?? - おかざき真里『&』
特に、誰よりも場数を踏むことで一流の技術を身につけた矢飼の言葉には、なんとも言えない重みがある。ぶっきらぼうで職人気質(かたぎ)な男の言葉。それが薫の生きる力になってゆきます。
例えば、薫が夜だけのネイルサロンを開店したと聞いた矢飼は、次のようにまくし立てます。
「どーせ思いつきで起業したんだろ お友達同士とかで 事業計画書もろくに書いてねーんだろ? 続ける気あんの? 資金ショートするか自分が体壊したらそこで終わり? それはお身体ご自愛くださいだね 派遣よりさらに不安定な仕事増やしてどーすんの」(まだ続くのですが割愛)
……厳しい言葉ですが、薫には反論のしようもありません。「続かないかもしれないけど やめません」と答えることしかできない。しかし、その直後に矢飼は、そんな薫が「うらやましくもある」と言うのです。
「失敗してもいくらでもやり直せる あんた達にはその時間があるってことですよ 時間というのは資本です それをもっと自覚して 自信をもって有効活用すりゃいい」(これまたまだ続くのですが割愛)
薫の起業を、ネガとポジの両面から評価し、最終的にしっかり励ます。
これが、矢飼のやり方です。