親愛なる仕事人間たちへ (2) 働く男の疲労は「媚薬」?? - おかざき真里『&』
もしもこの仕事論がバリバリ働く系の中年男から発せらていたら「なんか説教くさい……」で終わっていた可能性があります。起業したばかりで不安いっぱいの薫に、元気いっぱいのオジサンが語った所で、それはエネルギーの位相が違い過ぎるというもの。病人にいきなり極厚ステーキを食べさせるようなものです。
しかし、語っているのがボロ雑巾みたいになって働いているオジサンとなれば、話は別。やはり病人にはお粥ですよね。そして、全てを語り終えた直後に矢飼が言った「……ところでお前 終電大丈夫か?」からの、自転車ふたり乗り! 疲れているのに全力疾走! これには、枯れた中年男性が大スキな「枯れ専」でなくてもグッとくるハズです。そして、ここで重要なのは、矢飼が究極のツンデレだからキュンとするのではないということ。そこに仕事疲れがプラスされることで、えも言われぬ魅力が醸し出されているのです。
さらに別のシーンで、ドロドロに疲れた当直明けの矢飼がこんなことも言っています。「なんかもォ…… 俺 寝ないで明け方何やってんのって情けなくなっちまって……あんた夜中も受付にいろよ」……仕事人間の悲哀と可愛らしさが詰まったセリフから学ぶべきは、仕事人間の疲労がときに「媚薬」