わたしがそういうふうになったきっかけは、仕事で知り合った年上の女性との出会いだった。初対面の瞬間、目が奪われたのを覚えている。と言って、彼女がなにか変わった格好をしていたというわけではない。むしろベーシックであまり目立たない格好で、だから自分がそんな彼女に惹かれたのが不思議だった。
彼女はざっくりとアイロンをあてた白色のシャツを着て、柔らかそうな紺色のウールパンツを穿いていた。心持ちゆったりとしたデザインで、着心地が良さそうだ。もう何度も着たのだろうけれど、質が良いのかくたびれたふうではなく、服自体がくつろいだようになじんでいる。靴は黒い革のスニーカーで、年季が入っているがきれいに磨かれ、同じように足元になじんでいた。
髪型は清潔なショートカット、耳にはシンプルなシルバーのピアスが光っていて、装飾はそれだけ。
近寄って話すときに少しだけジンジャーっぽい良い匂いがして、その香りがした瞬間、「きれいな人だな」と思った。多分、恋に少し似たものに落ちたのだと思う。
でもそれと同時に、どうして自分が彼女を「素敵」だと思ったのかが知りたくなった。失礼なことを言うようだが、彼女はものすごい美人だというわけでもないし、スタイルが抜群なわけでもない。