若作りなんて一切興味なさそうで、化粧も装飾も最小限におさえていた。そういうことを一つひとつ検証した上で、もう一度考えた結果、やっぱり彼女は「きれいな人」なのだった。
彼女は自分が心地よくいられるあり方を知っている。他の人にどう見られるかよりも、まず自分が気持ち良くリラックスしていられる方法、そして自分をそうさせてくれる物を見出し、それらを大切にする術を知っている。
彼女から感じられるのは、まず自分への敬意と、そして自分が選んだ所有物への敬意だった。自分と自分の身の周りのものを丁寧に扱っている。そうして大切にされてきた、愛されてきた感じが、満ち足りた空気となって彼女を包んでいた。
「こういう人をきれいな人と言うんだな」
そして、そうする努力のことを「おしゃれ」というのかもしれない。
そんなことを考えながら、わたしは彼女が選び大切に管理している、彼女の数少ない所有物を眺める。
30歳を過ぎたばかりのころのわたしは、彼女と出会ってひとつの答えを発見した気持ちになった。その答えにほっとし、背筋が伸びる。わたしもこういう人になりたい。わたしも自分を、そして自分が選んだものを大事にしたい。
20代までは、わたしのクローゼットの中はしっちゃかめっちゃかだった。