次に会ったときも、その次に会ったときも、彼女は同じようなシャツを着て(まったく同じものももちろん着ていた)、同じようなパンツを穿いていた。靴はたまに違うのも見たけど、ほとんど黒のスニーカー。そして、耳にはやっぱりシルバーのピアス。
「○○さんって、おしゃれですね」
わたしが言うと、彼女はちょっと照れくさそうに笑った。
「同じものばっかり着てしまうんです。すごく気に入ってるから」
そう言ってもらえている洋服たちは、彼女に着られてなんだか誇らしそうだった。
わたしが着たい服って何だろう?
彼女と出会って、そんなことを考えるようになった。足りないものを補うことばかりしていた20代の頃には、考えもしなかったことだ。
でも、一度ちゃんと考えると答えはかなりはっきりしていた。
シンプルなもの、手触りが良いもの、着ていてリラックスできるもの。
え、それだけだったんだ?と思う。あんなにごちゃごちゃと考えていたのに、わたしが服に求めているのはこれだけだった。なあんだ、と思った。肩から力が脱けて、またほっとした。大切なものなんてちょっとしかないんだ。ただそれが何かわからなかったから、わたしはずっと不安だったんだ。