「鑑賞者が今いる場所」と「紙の向こう(ここにはない図)」との往還を、鑑賞者に促す。空間概念の転覆。定義権の取り返し。
ルールの転覆をするファッション。今夏、COMME des GARCONSの展示会がやっていた。そして、それに関する動画が上がっていた。
Yohji Yamamotoとギャルソンが黒の革命を行い、黒色がモードとして(自らの手によって)定番化した。そしてその後、第2の黒として赤を提示したとのことだった。
モードは定番化した時点でつねにすでにモードではないのだ。「それがモード」ってなった"その瞬間"に、それはモードじゃなくなる。いかに黒を着ないかというパフォーマティブな試みが、モードなのだろう(どれだけ着ないかということではなく、どのように着ないか)。
かつての黒が、次々に別の色になっていく。第3の黒、第4の黒、第5...。そのとき、これまでの「黒」が否定されることなく、「黒の増加」であってほしいなと思う。既存の規範をまとうことから離れてみて、新しい規範を作って選択肢を増やすこと。それこそが美しい営みだと思う。
そのように、新たな価値観を積極的に作る必要があるのだ。たとえばzipperが復刊したときのインタビューからは、カッコ悪くて古いものを軽やかに唾棄し、ただ自分らしく明るくいるふるまいがいかに大切か見てとれる。