人にやさしくできないときの処方箋を。【TheBookNook #22】
本作は、生前、作家としてあまり評価されていなかったカフカが残した日記やノート、手紙などから言葉を集めた名言集のような一冊です。
なにもそこまで……と言いたくなるほどのカフカ自身の強烈ともいえるほどのネガティブさに共感しつつも、くすっと笑えてしまうユーモアさとシュールさ。理不尽な世の中に対してもはや開きなおったカフカの愚痴は、私たち読者と一緒に絶望してくれながらも、寄り添い、許して、包み込んでくれます。
そう、気持ちが後ろ向きなときに、無理して前を向こうとしなくていいのです。誰かの言葉に傷ついてもいいのです。傷つくことは素敵なことなのです。
「いつだったか足を骨折したことがある。生涯でもっとも美しい体験だった」この言葉の意味も読めば分かります。
恐ろしくネガティブな言葉から元気をもらえるのは、カフカが現実から目を背けて言い訳ばかりしているように思えて、実は誰よりも正面から世の中とも自身とも向き合っていたからなのかもしれません。読後はネガティブな自分さえ愛おしく思えました。
2.西加奈子『うつくしい人』
こうありたい自分でいるために、自分を偽ることは誰にでも多少ありますが、それが度を越えると本当に生きづらいもの……。