人にやさしくできないときの処方箋を。【TheBookNook #22】
この作品では、自分がどうか以上に他人にどう思われるかを気にしていながらも、他者を見る目がどこまでも卑屈で傲慢な女性目線で進んでいきます。
現代に生きる人にとって感情移入しやすい設定だからこそ、序盤は胸が痛くなる描写も多いですが、安心してください。生きる環境を変えた主人公の心が人との触れ合いの中で少しずつ解けていくのと連動して、私たち読者の絡まった心も柔らかくなっていきます。
この世の全ての人の感情を知っているのではないかと疑いたくなるほど流暢な西加奈子さんの文章力には毎回言葉を失います。憧れや、妬み嫉み、作られた自分からも解放されて、ただ、素直になれたらいい。
頭ではわかっていても、ただの“自分”でいることは難しい……。自分が嫌いだと平気で言えてしまうほど自分を諦めている人にこそ読んでいただきたい。“自分で不幸になれる人は、自分で幸福にもなれる”。
みんなみんなうつくしい、うつくしい人。
3.瀬尾まいこ『おしまいのデート』
5つの短編が収録された本作品。“デート”ときくと恋人同士がするものというイメージが強いですが、この作品では祖父と孫、元不良と老教師、仲が良かったわけでもない同級生の男同士、公園で犬を飼うOLと男子学生……といった恋愛関係にあるふたり以外のデートが描かれています。