人にやさしくできないときの処方箋を。【TheBookNook #22】
どれもさらっと読める短編なのですが、凝った設定と個性的な登場人物たちが面白く、物語一つひとつの満足感はとても高いです。切なくて、寂しくて、あたたかい……瀬尾まいこさんが描く世界はどんなときに触れても私たち読者を誰ひとり置き去りにすることなく優しく招き入れてくれます。
そして何より、タイトルにもある、別れとも、さようならとも違う、“おしまい”。絵本の最後にある“それ”と同じ言葉。読後に芽生えた気持ちが自身のものとは思えないほどうつくしくて一生大事にしたいと思えました。
この物語の中で出会えた登場人物たちが今も幸せでありますようにと“おしまい”のあとを願いながら、丁寧に本を閉じて、深呼吸。……この一冊に出会えてよかった。
■心のSOSに気づくために処方箋のような一冊を
人にやさしくできないときや、些細なことでイライラしてしまうのは、見逃してはいけない自身からのSOS。
本ならば、誰かの迷惑になることもありませんし、あなたの心を煩わせるものに触れる必要もありません。負の感情に覆いつくされる前に、今、ぽっかり空いた心にぴったりとハマる、処方箋のような一冊が見つかりますように。「……おしまい。」