笑って癒されて幸せになる! “志ん生落語”の魅力とは?
私ごとですが「あ~もう~、生きてるのやんなっちゃったなあ~~、ヤバイ、ヤバイ…」という時に落語を聞いて「こんなばかばかしい世界もあるんだもの、もうちょっとだけ生きてみようかな」と思ったことが何度かあります。
どんな落語でもいいわけじゃあない。志ん生に限ります。上手い噺家さんはたくさんいるけれど、古今亭志ん生は別格、究極!上手い下手という評価では収まりきらない。そんな次元を超えて、思いっきり力が抜けて、別世界へ連れて行かれてしまうんです。落語初心者でも必ず虜になる “志ん生落語”の魅力をご紹介しましょう。
ヘビから血が出て、ヘービーチーデーって(絶句)!落語の聞きどころは、一人の落語家が複数の登場人物を演じ分けて、いわゆるキャラが立つ、シーンが浮かぶところです。
他の古典芸能と同様に、芸を磨いて名人の域に達する見事さというのはもちろんありますけれど、落語の場合は話芸の上手さだけではなく
“フラ” といわれるその人の
“持って生まれたおかしみ” に大きく左右されるのが特徴です。
志ん生はその
“フラ” が最高なのです。
たとえば
“まくら” といって、これから語る落語の前振り(本編と必ずしも共通する話題から入るとは限りません)があるのですが、そこで「落書きで、ヘビから血が出て、ヘービーチーデー」なんて言ってるんですね、志ん生は。
最初は「なんじゃ、こりゃ?」って感じでした。あまりにくだらなくておかしくて…。「見世物小屋で、命の親だよ、見て行きな、っていうから何かと思ったら、飯茶碗にご飯が一膳」っていうのもありました。
な~んだ、と席を立たないでくださいな(笑)。話の中身がおかしいんじゃないんです。こんな「まくら」から入って語られる志ん生の噺の数々は、筋が語れるほど何度聞いていても、聞くたびに毎回笑ってしまう。
まったく飽きない。リクツじゃないのです。
落語初心者にもお薦めしたい、この5本落語ブームといわれて久しいですが、CDやDVDでダントツに売れているのは、未だに志ん生だとか。亡くなって41年になるのにすごいことです。どれを聞いたらいいか迷うなら、お薦めを5本。「黄金餅」「火炎太鼓」「お直し」「後生鰻」「らくだ」。ああ、自分で言っておきながら、5本は辛い(笑)。次点で「付き馬」「稽古屋」「鰻の幇間」もぜひ!
最低最悪な気分から絶対に救ってくれる、志ん生落語志ん生のお弟子さんだった故・古今亭円菊師匠から聞いた話ですが、離婚しようと決めた夫婦が寄席で落語を聞いたら、よりがもどってしまったとか。
そんな漫画みたいなことが本当にあるんですね。落語を聞いて笑ったらガンが治った、という話も聞いたことがあります。現代に多い鬱病、心が壊れそうな場合などにも効果的なのではないでしょうか。
例えば世を儚んだり、食い詰めたり、下手したら犯罪に手を染めたり…もう、人間、万事休す、といった最低最悪な気分の時ですら、「生きていりゃ何とかなるんじゃないか」と思わせてくれる。もちろん、ハッピーな時はますますハッピーに!それが、志ん生落語の魅力なのです。
彼の噺はもう音源でしか聞けませんが、落語そのものを愉しみたいなら、東京にある5つの寄席、鈴本演芸場、浅草演芸ホール、末広亭、池袋演芸場、国立演芸場に行くもよし、ホール落語に行くもよし、CDやDVD、落語協会などのポッドキャストで聞くもよし。
笑って癒されて、脳ミソがシャッフルされて、自分も周囲も今より必ず幸せになれますって。
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古今亭志ん生の音源など
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落語協会
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落語芸術協会