2014年8月25日 06:00|ウーマンエキサイト

「自然界の声を聞く」香道は、心を和やかに豊かにする究極の癒し

室町時代から茶道、華道、能などと同様、500年続く香道の志野流20代目家元の若宗匠(わかそうしょう)、つまり息子さんである蜂谷宗苾(はちや・そうひつ)氏が、建築家・黒川雅之氏が主宰するカルチャー講座「モノラボ」でお話しされるというので参加させていただきました。普段はちょっと敷居が高い「香道」の世界に潜入です。

「自然界の声を聞く」香道は、心を和やかに豊かにする究極の癒し

「モノが文化を作る。香りにもモノと同じ力がある」と語る黒川氏のバックアップの元、香道を現代に、世界にと広めておられる蜂谷若宗匠は、30代のイマドキ男子。お稽古中の着物姿でなく、素足にウイングチップのお洒落な洋装だと、日に焼けてワイルドな雰囲気のシティボーイさながらで、この方が若宗匠?と失礼ながらガン見してしまいます。

香りを聞くと書いて「聞香」という繊細さこそ“和“の世界冗談はさておき、気さくな若宗匠のお話が楽しく香道の魅力にグイグイ惹き込まれます。まず驚くのは、香道で使う香木は、樹木が何らかの原因で傷ついて樹脂が溜まり、数100年経って香木に変化するという自然界の偶然から生まれた天然物なので、大変貴重で無くなる一方だということ。香道が、茶道や華道に比べて流派が2つしかないのも納得です。


「自然界の声を聞く」香道は、心を和やかに豊かにする究極の癒し

香木は、ラオス、ベトナム、マレー半島などアジアでのみ産出され、中には金の10倍の価値のある香木もあるようです。594年、香木は中国から仏教とともに輸入されましたが、香道は室町時代、東山文化のリーダー、足利義正の側近だった志野守信が初代として体系化して以降、一子相伝、父から子に受け継がれながら、日本で発展してきた日本独自の文化です。

香りをかぐことを、香を聞くと書いて「聞香」と呼ぶ繊細さ、道にまで体系化してしまう真摯な姿勢に、日本的なセンスを感じるのは私だけではないでしょう。

「心の耳を澄ませて、自然界からのメッセージを聞く」聞香の基本は香りを当てる遊びで、志野流では200種類以上あるそうです。ゲームを楽しむには教養も必要で、記録を残すための書道和歌を詠む、などといった素養が求められます。遊びでありながらも香道はまさに総合芸術なのです。


「自然界の声を聞く」香道は、心を和やかに豊かにする究極の癒し

香り当てゲームなんて簡単でしょう?と思われるかもしれません。いえいえ、びっくりしますよ。あまりにもそこはかとない幽けき香りなので、最初はどれがどれやら検討がつかないんです。ただ、人間の手が一切入っていない完全に天然の香りなので、ふうっと気持ちが和んでいく心地よさは格別!まさに、この世ならぬ別世界へ連れて行かれます。

蜂谷若宗匠は、「木と会話をしてください」とおっしゃいます。「自然の声を聞くこと。心の耳を澄ませて、自然界からのメッセージを聞くこと」が、まさに聞香だそう。

「365日、春夏秋冬、暑い寒い、雨の日、雪の日、様々な環境で香を聞く。
その中で、日々修行して香りの違いがようやく少しずつわかってきます」と。この、たゆたうような時間の推移。すぐ答えを出そうとする現代人の私たちには持てなくなっている身体感覚です。

視覚と聴覚だけで生きている私たちが、取り戻したい嗅覚若宗匠が自ら、この日の参加者に回してくださった香炉から漂う得も言われぬ薫香に、日常の疲れやストレスがあっさり消え、心が清められて驚きました。まるで魔法!?五感の中でも嗅覚は他の感覚と違って唯一、脳幹の感情を司る部分へ直接届くとか。だから、匂いって生理的な気分とダイレクトに結びついているんですね。好きな人の匂いとか…。

今、私たちは視覚と聴覚だけで生きていると思います。
本来、人間は香りと非常に近い存在でした。匂いで敵が近づくのを察知して逃げられたわけです。目で見て気づいたのでは遅いから…。私たちは、その感覚を長いこと忘れてしまってはいないでしょうか?

21世紀こそ、生きていることを実感できて、心が豊かになれる嗅覚を取り戻そうではありませんか。そんなところにも魅了されて、今、香道を習い始めたいと真剣に考えています。

・モノラボ
・香道志野流

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