秋のシックな装いに加えたいシルクフラワーに漂う詩情
日常生活で、身近な植物に目をとめることがありますか? 道端でそっと咲いている名も知れない草花がやがて朽ち果てていく様子は、誰にも気づかれない風景かもしれません。それでも懸命に咲く彼らが放つ、生命力の輝きには類まれな癒しがあります。
花は生きている花、あるいは生を終えた(枯れた)花にしか“美”を認められずにいたのに、シルクフラワー作家・中島みゆきさんの作品に出会った時、そのはかない一瞬の命を切り取って絹布に封じ込めた、こんな美しい別世界があるのか…と心が震えました。シルクで創られた花たちが語り始めるポエティックな遊び心に、あなたも触れてみませんか?
植物に癒され、退社して花を創るシルクフラワー作家にジュエリーメーカーに勤めていた頃は、充実していたものの、多忙で草花に目をやる余裕すらなく、まとまった休暇を取って、家にこもったり散歩したりしながら、この先どうしようかな…と考えていた、というみゆきさん。そんな中、道端に咲く雑草に、ふと目がとまった時、心がとても軽くなったそうです。
そして、会社を辞め、最初は趣味のつもりで、一人で布花を創り始めたのでした。あるファッションデザイナーが、みゆきさんの作風を評価してくれたことも励みになり、シルクフラワー作家になることの背中を押してくれたとか。何より、布花を創ることで心のバランスが保たれたといいます。
もともとは学生時代、サンフランシスコ在住の大好きな伯母を訪ねた時、手芸好きでハットコサージュなどを手作りしていた伯母からシルクフラワーを勧められたのが始まり。彼女が一時帰国した折、一緒に花材屋さんに行ってコテなどの道具を揃え、作り方の手ほどきを受けていたみゆきさん。2013年には、SOIE:LABO(ソワ・ラボ)というブランドを立ち上げます。同年、結婚した夫、音楽家の中島ノブユキ氏との出会いも、みゆきさんが創ったコサージュを彼がサイトで見て気に入ったことがなれそめ、という素敵なエピソードが…。