猫たちが語りだすサイエンス?! 「わかりやすくて深い内容のサイエンス本」 3選
■原因不明の病を克服した、サイエンスライター 『生命(いのち)のふしぎ』(柳澤桂子/集英社文庫)
著者は生命科学者として、またサイエンスライターとして活躍中。経歴だけに注目すると「まあ、エリートなのね」と、いいたいところですが、彼女はおよそ20年間も寝たきりの生活を送っていました。
まったく原因がわからず、病名もあいまい。そのためにどのように治療をすればよいのか、方針がたてられなかったのです。しかし、あるうつ病の薬が効き、劇的に回復します。そんな奇跡の人の言葉の、ひとこと、ひとことが胸にひびきます。
「孫が生まれてから、私は地球の行く末を今までより深刻に考えるようになった。
(中略)この子がお嫁さんになって、子供を産んで、またその子が子供を産んで、と連綿と続く未来が具現化して、心に映るようになった。その子供たちは、延々と私の遺伝子のコピーを受け継いでいくのである。
私という個体が消滅したのちも、私の一部が残っていく。そして、いつかは人類滅亡の日を迎えるであろう。私は、子供を産んでしまったことをなかば悔いているが、子供や孫の存在が幸せをもたらしてくれることも確かである」(本書より抜粋)
サイエンスエッセイとしてはもちろんですが、ことばに奥行きがあり、人生論としても逸品です。
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