■こんな経験ありませんか? 「呼び方で関係が変わった!」
――呼び方で人間関係が好転した事例を教えていただけますか。
五百田さん:では、心理カウンセラーとして、よく聞くお話を例に挙げてみましょう。
ママ友は、子どもをありきとした関係ですよね。多くの人が「〇〇くんママ」「〇〇ちゃんママ」と呼び合うはずです。でも、LINEやメールのやりとりにいちいち「〇〇くんママ、近々お茶しませんか?」「〇〇ちゃんママ、あさってなら都合いいですよ!」なんて書き続けるのは正直、面倒…。
そこで、いつの日からか「ミカちゃん、明日お茶どう?」「アヤちゃん、OK!」と下の名前で呼び合うようになって距離がぐっと近づき、旦那の浮気話までできるほどの仲、つまりママ友ではなくふつうの「友だち」の関係に発展したと聞きました。
――夫婦間ではいかがでしょう?
五百田さん:心理学の世界では、「ママ・パパと呼び合う夫婦は満足度が低い」という調査結果があります。これは役割呼びをされると、個人として認められていない気持ちになるから。
ママをねぎらいたい場面にこそ「〇〇、いつもありがとう」と名前で呼びかけ、グンと株を上げるパパたちがいます。結婚記念日やパパの誕生日には、ぜひ、子どもが生まれる前の呼び方で夫を呼んでみましょう。お互い忙殺される日々で離れがちな心も、一気に近づくはずです。
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また、義父母の呼び方でも夫婦関係を好転させるケースがあります。例えば、夫の実家に帰省し戻ってきたあなた。同じ内容でも、夫から次の2つのパターンで言われたら、それぞれどう感じますか?
A:「うちのお母さんっていつも細かいこと言ってごめんね」
B:「〇〇(義母の名前)ってさぁ、いつも細かいこと言うんだよなぁ」
五百田さん:謝罪の言葉が入っているAより、義母の名前を呼び捨てにするBのほうが、素直に受け止めることができるのでは?
これは旦那さんがお母さんと距離をとる呼び方をすることで、夫婦が共犯関係になる心理が働くためです。義母のいない場面では下の名前で呼び捨てにし、義母を前にしたらきちんと「お母さん」と呼ぶ。呼び分けることで夫婦仲は良くなり、義母に対する奥さんのストレスが軽減するという事例もあります。
――本当に呼び方ひとつで人間関係やコミュニケーションって変わるんですね…。
五百田さん:私は、言葉の力を信じています。言えばわかると思っているので、メールも話も長いです(笑)。いわば、コミュニケーション信奉者。ネットやSNSの登場によりコミュニケーションが楽な時代になりましたが、だからこそコミュニケーションをさぼっちゃいけない! と思っています。そのとっかかりとして、「呼び方」はとても有効なツールであると思っています。
■子どもは見ている「ママの“うまい呼び方”」スキル
――人間関係に悩んでいるママたちも、呼び方で状況を好転できるでしょうか?
五百田さん:現代のママたちは、仕事に育児に家事に本当に忙しい日々を送っていると思います。コミュニケーションにまで気をつかっていられないという人も多いでしょう。
でも、だからこそ! 呼び方ひとつケアするだけでいいんです。子どもに当たってしまったり、ママ友にLINEを返せずにいる時は、下の名前で「○○ちゃん、ごめんね」と呼びかけるだけでも違います。
また、自分の子どもが、友だちからどう呼ばれているか? にも注目してみてください。あの子とだけあだ名で呼び合うから一番仲が良いのかな? という具合に、子どもを取りまく友人関係を推し量るバロメーターにもなります。
そして何より、子どもは親のコミュニケーション力を見ながら育ちます。ママが呼び方を上手に操り、パパやママ友、義父母たちとうまくコミュニケーションをとるところを子どもに見せるのは、教育上とても良いことだと思います。
“うまい呼び方”とは、正しい日本語の使い方やマナーの話ではありません。時には、日本語的に正しくないとしても、人間関係を円滑にするためにはこの呼び方を選択するほうが効果的! という話です。
この連載を通して“うまい呼び方”をマスターし、忙しいママを取りまく人間関係がより良くなるお手伝いができればと思います。
五百田さんが提唱する“うまい呼び方”の基本の考えがわかったところで、次回から「子どもの呼び方」「夫の呼び方」「ママ友の呼び方」について、具体的なメソッドをご紹介していきましょう。
参考図書:
「あの人との距離が意外と縮まる うまい呼び方」(サンマーク出版)
「あの人のことをどう呼ぶかで、距離感は変わる」。コミュニケーション・人間心理の専門家として数々のメディアに出演し、ベストセラーをたくさん世に送り出す「対人関係のスペシャリスト」である著者が、コミュニケーションについてのさまざまな理論や方法論を分析した結果たどり着いたのが、「『話の内容』や『伝え方』以上に、『どう呼ばれるか』で人の心は決まる」という境地。巻頭にはスペシャル対談として、2016年に日本一を成し遂げた北海道日本ハムファイターズ・栗山英樹監督との「呼び方」対談を収録。
取材・文/山田裕子
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