前回からのあらすじ
入園式のスーツを買いに行った友里は、自分の体型の変化に愕然とする。そうして亮との夜の生活がないことに悩むのだが…。そんな日々の中、息子の悠斗の入園式の日がやってきた。そこで同じクラスとなるママたちに会ったのだが…。
「夫に相手にされていない?私たち、かけちがえたボタンみたい」
●登場人物●
友里:都会で就職し結婚したが、夫・亮の転勤で地元の街に戻ってくる
亮:友里の夫。友里から告白してつきあうように。息子の悠斗を妊娠して以来、夜の生活がない
■幼稚園のクラス会で覚えた違和感
入園式から数週間は午前保育の日が続いた。子どもたちの身体測定をしてすぐ終了だったり、1時間ほど園で過ごして降園になったりとなかなか妙にあわただしい。
そんな中、家の方向が一緒のひまりちゃん親子とはすっかり打ち解けていた。
「あの、ひまりちゃんママ。ひまりちゃんママってちょっと言いづらいので、名前で呼んでも大丈夫?」
「うん、いいよ。こっちも名前で呼ばせてもらうね」
こうして、ひまりちゃんのママことマキちゃんは、私の中でのママ友第一号になった。
そして、悠斗にとってもひまりちゃんはガールフレンド第一号。
一緒にブランコで遊んだり、砂場あそびをする姿は、本当にほほえましく思える。
*
ある日、クラス役員決めが行われるとあって、保護者全員がホールに集められた。
「役員決めなんて緊張するね…くじ引きだったらどうしよう」
マキちゃんのつぶやきに周りのママたちもうなずいていた。
「あ、園長先生来た」
ざわついていたホールはしんと静まり返る。
役員決めは、意外すぎるほどスムーズだった。というのも、事前に園長先生による根回しがあり、前年度にPTA会長を務めた上田さんという人がクラス委員長を引き受ける方向で話が進んでいたからだ。
だけど…。承認の拍手を求めるときに、ふたりほどしなかった人がいるのが見えた。
そのうちのひとりでちょっとメイクの濃い人が、上田さんのことをあからさまに睨みつけているのがわかる。
(え? 何があったんだろう…)
園長先生に促され、上田さんがみんなの前であいさつをする。
「上田樹の母、上田葉子です。この度、うさぎ組のクラス役員を務めることになりました。一年間、精一杯頑張りますので、みなさんもご協力のほどよろしくお願いいたします」
先生の話などが一通り終わったあとで、上田さんの提案でみんなが集められた。
「ここ数年連絡網による連絡が途中で止まってしまい、緊急の連絡が最後まで行き届かないことが発生しています。そこで、今年は試験的にクラスごとにグループLINEでの連絡を行うことにしましたのでご協力お願いします」
こうして、うさぎ組グループLINEが作られることになり、みんながそれぞれ連絡先を交換することになったのだけど…。
「あんた、見かけない顔だよね。
この辺に住んでるわけじゃないでしょ?」
そう声を掛けてきたのは、さっき承認の拍手をしなかった人のひとりだった。
「エダカオルっていうの。よかったらあたしとLINE交換しない?」
私には、断る理由がなかった……。
そして、私にとってショッキングな事実が判明する。
入園式のとき、バッグをめぐってこぜり合いになった子は、カオルさんの息子くんであることがわかったのだ。
(なんだろ、切れない糸に巻きつけられたようなこの嫌な予感…)