連載記事:わたしの糸をたぐりよせて

ママ友トラブル決着の行方…それはまさかの幼稚園イベントで起こった【わたしの糸をたぐりよせて 第11話】

わたしの糸をたぐりよせて

わたしの糸をたぐりよせて

「いつか自分のブランドを出したい」。そんな想いを抱いていた学生時代。でも希望の就職先にはことごとくふられ、入社できた会社で出会った亮。結婚して、子どもが生まれて、私は幸せになれると思ったのに…。私の…

わたしの糸をたぐりよせて
前回からのあらすじ
イナガキから「海外に行く」ことを伝えられる友里。突然現れて、急に去っていくイナガキに友里は寂しさを感じながらも、それぞれの道を歩んでいくことを決意するのだった。

ママ友に振り回される日々に決別! そして彼とも別れの日が近づく…

●登場人物●
立花友里:都会で就職し結婚したが、夫・亮の転勤で地元の街に戻ってくる
:友里の夫。友里から告白してつきあうように。息子の悠斗を妊娠して以来、夜の生活がない
イナガキ:友里の幼なじみ。小学校~高校まで一緒だった。現在は人気デザイナー。
上田:悠斗と同じ幼稚園に通うママで、うさぎ組のクラス委員長
マキ:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友で気が合う
カオル:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友で、友里を配下に置こうと考えてる

※このお話はフィクションです


■幼稚園のイベント、トラブルの予感が…

紅葉の季節になり、おゆうぎ会に向けての保護者会がめぐみ幼稚園で行われることになった。

「おゆうぎ会の親の仕事ってどんなのかな」

隣に座るマキちゃんの問いかけに、私はうーんと首をひねった。
ホールには、去年までのおゆうぎ会の衣装が並べられていたけれど、チュールやサテンなど、少し扱いが難しい生地が使われていた。

(これ、業者さんが作ったのかしら? もし、手作りだったら大変だっただろうなあ)

そんなことを思っていると、担任の先生が入ってきた。


「みなさん、こんにちは。今日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございます。早速ですが、おゆうぎ会のうさぎ組の出し物は、ピーターパンに決まりました」

先生が話している最中、上田さんが出し物についてのプリントを配っている。
配役を見ると、ひまりちゃんはティンカーベル役、上田さんの息子のいつきくんはピーターパン、カオルさんの息子まさあきくんはフック船長、そして悠斗はジョン・ダーリング役になっていた。

「あ、ひまりちゃんティンカーベルだ。かわいいじゃない」

私はマキちゃんに小声で言うと、「うんそうだね。悠斗君は、ウェンディの弟君なんだ」

「うわぁ! まーくんはフック船長かあ、バリバリの悪役だけど目立つからいっかな?」とカオルさんが声を上げていた。

いろいろざわつき始めたところで、先生がおもむろにまた話し始める。


「それで、衣装なんですが、配役のところを見ていただいて、おうちにあるもので構わないのでいくつかご用意していただくのと、星印のついている役の衣装は新しく作る必要があるのでどなたか手伝っていただきたいのですが……」

すると、カオルさんが勢いよく手を上げる。

「先生、私手伝います! ほら、あんたたち二人も手伝うんだよ!!」

と、いつも一緒にいるママ友たちに無理やり立候補させてしまった。

みんなで顔を見合わせていると、上田さんが「お任せしてしまって、大丈夫ですか?」と心配そうな表情を浮かべる。

「心配なんていらないですよ。こう見えても裁縫得意なんです!」

「後には引けない」という表情をチラッと浮かべながらも、カオルさんは堂々と宣言した。

「では、江田さんにリーダーとなっていただきますね。もしサポート必要になりましたら遠慮なく相談してください」先生がそういうとみんなが一斉に拍手をした。

そして、その他の親の係が伝えられ、その日は子どもを引き取って解散となった。


帰り道。
私とマキちゃん、そして上田さんと一緒になり、話は自然におゆうぎ会のことに及ぶ。
帰り道。私とマキちゃん、そして上田さんと一緒になり、話は自然におゆうぎ会のことに及ぶ。
「カオルさん、裁縫得意なんだね。なんとなく“似つかわしくない”って言ったら失礼かな」とニッコリしながら、ちょっと毒を吐くマキちゃん。

「大丈夫だと思いますよ。江田さんは言ったことはやる人ですから」と上田さん。


考え事をしていたら、上田さんに「浮かない顔してどうしたの?」と水を向けられてしまった。私は、言葉を選びながら思っていることを口にする。

「そっかぁ~。洋服作りをしない人には扱いにくい生地が使われてるってことなんだ」とマキちゃん。

「そういうことを知っているってことは、立花さんはその難しい生地を縫えるということ?」

大学で服飾を専攻していたことを話すと、マキちゃんから「作品見せて! 見せて!」と懇願され、恥ずかしながらスマホに保存してあった卒業制作の写真を2人に見せた。

「すごーい。これ全部自分で作ったんでしょ? だったら衣装係に立候補しちゃえばよかったのに」

「立花さんも、江田さんほどとは言わないけれど、もう少し押しが強いといいのにね。でも、江田さんがつまずくことがあれば、フォローできるようにしておく方がいいかもしれないわね」

と、上田さんには少しだけ痛いところを突かれながら、その日は別れた。



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