疲れた心にじんわり刺さる。吉本ばなな『幸せへのセンサー』から学ぶ“幸せの本質”
登場人物の感情の機微や、細やかな人間関係を描くのがとても上手い人で、女性ファンが多い印象がある。
もともと随筆もたくさん出版している人なのだが、この本は近所の本屋でも、小説やエッセイのコーナーではなく「啓発・心理」の棚にどーんと置かれていて気になった。そもそも、最近の自己啓発本は心理系の資格を持っている人、精神医療の従事者、脳科学に精通している人とか、はたまた恋愛について発信しているインフルエンサーとか、啓発に特化している人の作品が多いので、必然的にその人たちの本を手に取る機会が増えていた。
そういう本も、読んだ瞬間には心がスッキリするので決して悪くないのだけど、この本はひと味違った。吉本ばななさんは、たとえ話が上手い。本は、私たちが日常で抱えやすいストレスの正体や、心の疲労を回復するにはどうしたらいいのかなどに触れられているのだが、たとえ話に自然と共感せざるを得ない。彼女が具体的に挙げてくれる一例が「たしかに……」と思わざるを得ないもので、そしてすごく日常的なものなので、自分が疲れちゃう瞬間ってこういう時だったんだなあ、と自然に理解できる。
■じんわりと心に刺さる、独り言のような教え
そして本の中で吉本さんが勧めているのは、幸せを察知する「心のセンサーを育てよう」