疲れた心にじんわり刺さる。吉本ばなな『幸せへのセンサー』から学ぶ“幸せの本質”
というものが混ざっている。
本の中には、そういうものがひとつもなかったように感じた。体験談も踏まえて書いてあるので、感じ方・やり方を押し付けられている感じがしないし、そもそも彼女自身が実践している方法がすごく自然なことなので、結果的に「頑張る、のハードル」が下がったように感じるのだ。
とはいえ、最近は「頑張るハードルを下げること」をテーマにして書かれた啓発本も多い。だけどこの本はそれだけをテーマにまとめられているわけではないところもよかった。頑張りすぎるのも、頑張ることを辞めようとしてみるのも違う。というより、誰かに勧められてやらなくてもいいんだと思えたのが、すごくよかった。■言葉のプロの文章に癒やされて
心理学とか脳科学とか関係なく、人間というものがなんなのかをよく考えてきた人が紡ぐ文章は、なだらかで優しい。
彼女が人間心理の専門家ではなく、言葉と文章に心身を注いできた人だからということも大きかったかもしれない。時に「こういうことをするのは不幸だ」と言い切っている文章もあったが、選び取っている言葉が優しいので、考え方を押し付けられたような感じがしないのだった。
日本は識字率が高く、誰でも日本語を書けるので、今のインターネットは「言葉のプロ」